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クライアントインタビュー・導入事例

クライアントインタビュー・導入事例

医療法人社団神戸国際フロンティアメディカルセンター 理事長 田中紘一 氏

2014年11月、神戸医療産業都市構想の一角を担う、肝・胆・膵の消化器専門病院としてスタートした神戸国際フロンティアメディカルセンター(通称、KIFMEC)。
その実現に粘り強く取り組んでこられた田中理事長にお話をうかがった。

さまざまな課題を克服してきた歴史

― 開院おめでとうございます。私も少し関わらせていただきましたが、ようやく診療がスタートできますね。

田中 本当にようやく開院にこぎつけた、たどり着いたというのが実感よ。この神戸の医療産業都市構想に参加してプランを練ったころから数えると、9年以上かかったからね。
この間、いろんなことがあったけど、日本経営さん、特に山本さんにはお世話になったよ。

 

―そもそも、生体肝移植に取り組まれるきっかけについてお聞かせいただけますか。

田中 そりゃね、医師を志して、自分の道を選ぶとき、道しるべになるのは、患者さんとの出会いだよ。小児外科医として出発して、胆道閉鎖症、これは1万人に1人ぐらいの難病でなかなか治療がうまくいかなかった。当時はオーストラリアや、アメリカ、ドイツまで行って手術をしている状況だった。もし、「日本で移植ができるようになれば…小さいお子さんが小学校に行け、スポーツができ、結婚もできる」と思ったことがきっかけだった。ただ、当時は、日本全体が移植に対して、特に脳死が人の死かという課題があって、ましてや健康な人を傷つけることには反対意見も多かった。その中で私たちは、研究を重ね、この方法で進めようと決意と覚悟を持って1例目を手掛けた。その後は、もう、まっしぐらよ。

 

―今までどれぐらいの手術を手がけられたのですか。
田中 ちょっともう数えてないわ。京都大学を出る時が1,054件、それ以降、国内海外を含めると、2,300件ぐらいだと思う。
件数のことをよく聞かれるけど、患者さん一人ひとりと向き合って、いろんな手技を開発してきたことの方が誇りです。血液不適合の手術も大人は最初20%程度の成功率だったが、工夫と開発を重ねて今は問題ないようになっている。4キロ、5キロの患者は負担が大きいとなっていたけど、今では生まれたときから肝臓病になっている新生児にも適応可能になっている。ドナーの問題、レシピエントの問題、ご家族含めた精神的なケアなどいろいろな難題にぶつかっては克服してきた、これが私の歴史です。

1を得るために9の失敗を重ねる

―どうやったらそのように次々と課題をクリアし続けることができるのでしょうか。

田中 それは4つのCだよね。1つめはchallenge(挑戦)、2つめは curiosity(好奇心)、そして 3 つめは continuity(継続性)、最後にconsistency(一貫性)です。
10取り組んだら、9は失敗だよ。1を得るには9つの無駄が必要。諦めずにそれでもやり続けるということですよね。
あとは、志かな。有馬頼底さんとお話しした時に、「竿の先を見て歩きなさい」と「耕す」の2つを教えてもらった。先を見続けなさいということだと思うよ。志があれば我慢もできれば努力もできる。
「耕す」の方は、基礎づくり。外科医でいえば糸結び。斜めに角度を変えて結んでみる、皮膚を縫ってみる、いろんなことを練習してきたし、今でも手技を磨いているよ。基礎は本当に重要で、基礎がしっかりすれば技術が高くなると同時に裾野が広がる、そうすると救える患者さんも多くなる。
基礎は知と感性なんだよ。最近の外科医は書物を読まなくなったが、源氏物語を読めば確実に力が上がる。

 

― 外科医に源氏物語ですか?

田中 そうだよ、だから感性も鍛え上げないといけない。いろんな本を読むとか、道端に咲いている花を綺麗だと思ったり。感性を磨いていれば、無意識のうちに知識がふとした時、お風呂に入っている時とかに、スーッと引き出されてくるんだよ。
ただ、医者がラッキーなのは、患者さんと出会える、鍛えられる機会をもらえる職業なんだよ。患者さんから悩みを打ち明けられ、それを共有する。医学的に治っても、患者さんの悩みは取れていない、こういうこともありうるんだよ。患者に寄り添う、患者さんと一緒に歩ける人が理想的な医者だと思うよ。難しいけどね。
それと不思議なことにね、真摯にやっていれば、必ず患者さんは集まってきてくれる。肝移植の時も、勉強して、勉強して、勉強していれば、ちょうどそのことで困っている患者さんが現れる。若い時に山陰地方に赴任したときもそうだった。

 

― 確か、島根県立中央病院でしたよね?

田中 そうそう、当時出雲市は7.7万人、医療圏でいっても15万人ぐらい。そんなところに、30才の小児外科医が行って、難しい症例を紹介下さいと言ってもちょっと難しいよね。
でも、そこでヘルニアを5分でやります、と言ってお願いして、誰よりも綺麗に傷口を縫うことを心掛けた。そうするとやっぱり、たくさんの脱腸の患者さんが来てくれて、脱腸以外もお願いするとなって、患者さんが増えていった。何でも、ひとつごとを大事にすることが大切だと思うよ。

目標はメイヨークリニック

―さっそく海外の患者さんも来られているようですが、なぜ海外にも目を向けておられるのでしょうか。

田中 昔は日本では移植ができず、欧米から学びながら、日本人の知恵と努力でようやく追いついてきた。ふと気づくと、同じように中東やアジアが困っている。それらの求めに応えていくのも、やはり医療に携わった者の役割だと思うんです。


―技術的には比較的スムーズにいくものなのですか。

田中 冗談いっちゃいかんよ。海外はまだ医療に関するインフラが整備されてなくて、ものすごく時間がかかる。ウイルス学、輸血学…ひとつずつ、学んでもらう必要がある。こういうことを継続してやれるところが日本人のいいところだと思う。ひとつずつ積み重ねてきて、エジプトでは、2001年から肝移植を始めて国内で2,600件を超えてきた。
KIFMEC ができたことで、これからは、エジプト、台湾、シンガポール等から医師や看護師を受け入れて育てていくことが決まっています。


―神戸医療産業都市構想の理念でもありますね。

田中 メディカルクラスターも、移転した神戸中央市民病院を核として、専門性が高い病院が集まってきた。再来年には、県立こども病院が加わって、このクラスターに約1,500床が集まることになる。今後、アジアの医療拠点としてシナジー効果を生み出していくには、それぞれの病院が自立、成長していくことを前提に、お互いの連携が重要になってきます。国際医療展開をキーワードに、これまでの患者の奪い合いというゼロサムの世界から、ポジティムサムの世界にしていきたい。そして、5年間で結果を出して、次の世代にバトンタッチしていきたい。あの Mayo Clinic も幌馬車しか停まらないような町のクリニックとして出発して、今はあれだけの病院になっている。小さなことからコツコツと、というのは、皆同じ気持ちだと思います。

理想の医療を求め続ける

― 最後にこのKIFMECをどんな病院にしていかれたいですか。

田中 やはり、続けること、そして発展させることです。もうひとつあるとすれば、消化器疾患のオールマイティーな専門病院として、1 つのモデルを示したい、という思いもあります。
そのために、患者さん中心、チーム医療、学びながら成長するの 3 つを理念に掲げています。肝臓しかできないとか、腹腔鏡しかできないではなくて、ここに来れば消化器分野のオールマイティーな治療が受けられる、そんな病院です。
また、チーム医療をより実践しやすくするために、従来の職種ごとの組織ではなく、外来ケアサイクルユニット、消化器ユニット、肝胆膵ユニット、周術期ユニットの4つのユニット制にしています。そのユニットに医師も看護師もコメディカルも事務も入っています。そんな中で、外来ユニットでは、患者さんが亡くなるまでフォローしようということで、海外も含めて定期で連絡をすることにしています。
このユニット制を含めて、いろいろなアイディアが定着するには少なくとも3年はかかるでしょう。そりゃあ、理想だねとおっしゃる方もいるでしょうけど、私たちの病院はまだオギャーと産声をあげたばかりで、今は楽しみな気持ちでいっぱいです。

 

―貴重なお話、ありがとうございました。

(文責:編集部 大池)

◆KIFMECのMission
  1. 高度先進医療を安心・安全に提供する
  2. 医療実地教育の場を提供し国際的な人材育成をする
  3. 病院の国際化を助ける医療情報システムを創出する

◆医療法人社団 神戸国際フロンティアメディカルセンター
概要
〒650-0047 兵庫県神戸市中央区港島南町一丁目5番地1
  1. 消化器内科、消化器外科、内視鏡外科、移植外科、腫瘍内科、内科、放射線科、病理診断科、臨床検査科、麻酔科
  2. 病床数 120床(うち、ICU6床)




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