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クライアントインタビュー・導入事例

クライアントインタビュー・導入事例

[診療科別原価計算]公益財団法人慈愛会 今村総合病院 有島事務長/佐々木課長

「目標」と「願い」が込められた原価計算。
病院全体の損益を見える化し、医師を動かすマネジメントを実現する。

 

---鹿児島県の医療・介護・福祉を支えてきた慈愛会様は創設80周年を迎えました。80周年を迎えるにあたり様々なプロジェクトを実行されていますが、「診療科別原価計算」の導入も、その一環だったのでしょうか。

有島 氏クライアントインタビュー・導入事例 80周年を迎える一年前、2013年に様々なプロジェクトが立ち上がりました。慈愛会の目指すビジョンを明確にし、新棟の建設計画などもこの頃から進められてきました。地域の医療を支える急性期病院として、しっかりとした基盤を整えていくという思いがあったのです。
 経営基盤を整えるためには、利益が必要です。しかし「利益を出す」という経済活動と医療行為を結びつけることはとても難しいことです。患者さんの命と向き合っている医師たちに、一方で利益の大切さをきちんとしたエビデンスを通じて理解してもらう必要がありました。
 試行錯誤する中で稲盛和夫氏のアメーバ経営や原価計算を知りました。それらを病院経営に落とし込んだものが「診療科別原価計算」だったのです。

 

佐々木 氏元々病院全体の損益などについては、細かい部分まで分析ができていました。30ある診療科別に、入院患者数、退院患者数、平均在院日数、診療収入などを蓄積していたのです。しかし、各科の主任・部長たちが、その損益について関心を寄せているかというと、そうでもない。
 診療報酬や入院患者数などのプラス面については注目していても、人件費や薬や備品の価格には詳しくないという状況でした。それが、診療科別原価計算を導入したことで全てが可視化されたのです。

 

---診療科別原価計算を導入し原価率が明らかになりました。その原価率をもとに各科の利益貢献度を導き出していますね。その際、保険契約の一部について分析レポートを提供し見直しをご提案させていただきました。

有島 氏 今村総合病院では、開院時から血液内科に力を入れていました。血液内科は医師・スタッフ・病床いずれも他科と比較すると、多くの割合を占めています。また、薬を大量に使い、その価格は年々高騰しています。確かにメインの診療科ですから経費が高いのは当然です。
 しかし、病院の最終的な利益にどれだけ貢献できているのか。現場ではそういった視点を持ち合わせていませんでした。原価計算により、血液内科を含む全ての科の報酬と経費と利益の関係が整理でき、各科における利益貢献度が明らかになりました。
 また、2017年に新棟が竣工されました。建屋の建築費と最新の高度医療機器導入費が新たに減価償却費として発生しています。設備投資にかかる費用も原価計算に落とし込んでいますので、各科の最終損益は赤字になる科の方が多い状況でした。
 竣工してからは赤字が続くのは想定していましたから、各科の損益額についてもある程度赤字となることは覚悟していました。問題は、それを現場で働く皆さんにどうやって理解してもらうかということです。
 医療の最前線で働いている現場の皆さんはとても一生懸命です。
 それに相反するように、つきつけられる数字は赤字。
 現場からは「こんなに忙しいのに何故!?」と怒りをにじませるような反応でした。
 せっかく原価計算を取り入れたのに、現場のモチベーションが下がってしまっては全く無意味なものになってしまいます。
 原価計算は良いように解釈するか悪いように解釈するか、捉え方によって数字の持つ意味が大きく変わってしまいます。原価計算が働く皆さんのモチベーションを上げるための大事な根拠となるように、データを活用しなければなりません。
 そこで、日本経営の方たちと一緒になって、数字の意味を一つひとつ丁寧に説明しました。現場の理解を得ることは、私たち事務部門の説明だけでは困難だったと思います。

 

---病院を継続して発展させていく難しさを現場に理解してもらうのは、簡単ではありません。理解してもらうのに大事なポイントはいくつかあると思いますが、その中の一つが原価を明らかにすることだったのですね。

佐々木 氏 そうですね。例えば「減価償却費」という用語すら、医師にとってはなじみのないものでした。繰り返しになりますが、命を救うという尊い働きに対して、利益を出す・コストをカットするという考え方はマッチしません。合理的な判断とは冷たい印象を与えるものです。しかしどんなにすばらしい理念を掲げても、利益がなければ経営は続けられません。
 病院に限らず、経営とは人件費・設備関係費などの必要経費を支払った残りが利益として算出されます。収益だけでなく必要経費にも目を向けていただくという点で、診療科別原価計算はとても重要な役割を果たしました。

 

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---事務局としては、現場の方々にどのようなアプローチを行っていたのでしょうか?

有島 氏 まずは減価償却の仕組みなど会計の簡単なものから、最終的に病院経営における利益貢献度を説明しました。
 これについては、日本経営の皆さんに力を尽くしていただきました。
 「利益貢献度を伸ばすことを目標にしてください。なぜなら…」と丁寧に繰り返し伝えていきました。現場からは厳しい意見や難しい質問もたくさんいただきましたが、日本経営の皆さんに手伝っていただき、ある時は矢面に立ってもらい、粘り強く対応していただきました。配分の仕組みなどに疑問を投げかける方もいらっしゃいましたが「病院として一定のルールに基づいています。そのルールとは…」と繰り返し説明しました。

 

佐々木 氏 日本経営からのフィードバックをどのように説明すれば現場に理解してもらえるのか、木戸さん(現日本経営ウィル税理士法人担当)に相談しながら、事務としての役割を果たしていきました。

 

---目の前の患者さんを助けるために働いている先生方に、赤字や利益の話をしても「お金のことばかり気にしていたら、助かる命も救えないのでは」という反応になりそうです。

有島 氏 もちろんそういった反応がありました。
 「事務は数字のことばかり、金のことばかり。自分たちは患者さんの命を救いたいんだ。少しでも元気になって退院してほしいと思いながら働いている」
 私は今でも医師たちと利益の話をします。
 「そのために利益が必要なんです。先生が実現したい医療、より高度な医療を提供するための資金。それが利益なんです」と。
 日本経営から毎月届く福岡オフィスCommunicationLetterに書いてありました、二宮尊徳の言葉「道徳なき経済は罪悪であり 経済なき道徳は寝言である」を、経営幹部を含めた会議で読み上げました。
 「私たちは儲かりたくて利益利益と言っているのではなくて、その先の良い医療を提供するための利益なんです。誰かと競争しているわけでも戦っているわけでもありません」と伝えました。

 

--その後、診療科別原価計算で明らかになった診療科別の収益性を、人事考課制度に反映させるというハイレベルなプロジェクトへと展開しました。

有島 氏 原価が明らかになっただけで、利益が出せるわけではありません。数字の意味を理解して、医師たちの行動変容を促す。それができて初めて収益改善ができることを期待しています。とても難しいプロジェクトですが、診療科別原価計算を導入していなければ、現場の理解も得られなかったと思います。

 

佐々木 氏 かつては、医師たちと収益について話し合う機会などありませんでした。経営にかかわる数字を医師と一緒に議論できるようになったというのは、大きな変化です。

 

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--日本経営の印象について教えてください。

有島 氏 私の個人的な印象ですが、日本経営の皆さんは常に顧客目線で対応してくださっています。専門性が高いのはもちろんのこと、私たちと寄り添い一緒になって課題に取り組んでくれます。
 先生の中には、やはり納得されるのに時間のかかる方もいらっしゃいます。その方からしてみれば木戸さんはだいぶ年の差がありますから、どこまで信頼していいものかという雰囲気が暗に漂ってくるのです。そのような先生に対しても、臆することなく全く感情的にならずに冷静に対応していただいています。
 失礼を承知で言わせてもらうと、決してスマートではありません。しかし経済的利益の拡大という合理性を求められるプロジェクトであっても、最終的には人と人とのコミュニケーションで進めていくものです。日本経営の姿勢はある意味合理的とは対極にあるかもしれませんが、徹底した顧客目線とにじみ出る誠実さで人の心を動かしています。我々も、一緒にプロジェクトを進めていくパートナーとして信頼すると同時に、心強い味方としても頼りにしています。

 

--慈愛会様の目指す将来像とはどのような姿でしょうか?

有島 氏 急性期病院としてのポジショニングをよりしっかりと確立し、地域との連携を強化させていくことが求められています。また、病院がどんどん拡大する中で難しい業務も増えました。
 拡大した業務にフィットするよう必死に努力を重ねているのが、現場で働く医師や看護師やスタッフたちです。皆の努力に報いるためにも、恒常的に黒字経営の病院であり続けなければなりません。利益があるから地域のニーズに応えられる、最新の機器を導入できる、一人でも多くの人を救うことができる…そういった病院の将来像や目標を、これからも一緒に語ることのできる組織でありたいと思います。

(文責:日本経営グループ)

 

●公益財団法人慈愛会
URL: http://www.jiaikai.or.jp/(外部サイト)

●今村総合病院
〒890-0064 鹿児島市鴨池新町11-23
URL: http://www.jiaikai.or.jp/imamura-general/index.html(外部サイト)
診療科目:救急・総合内科(ER)、腎臓内科、血液内科、消化器内科、麻酔科(術前診察)、ペインクリニック内科、脳神経外科、循環器内科、脳神経内科、耳鼻咽喉科、放射線科、眼科、泌尿器科、皮膚科、リハビリテーション科、スポーツ整形外科、外科・消化器外科、精神科、産科・婦人科、小児科、歯科口腔外科、病理診断科、脳卒中センター、尿路結石治療センター、特殊外来
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